ちょっとした心遣いが対人関係を大きく左右する

何の前触れもなく訪ねてきて、こちらの都合も聞かずにいきなり雑談を始めたり、自分の用件を話し始める人がいる。こちらは30分後に会議が控えており、そのための資料作りに追われているというのに、そんなことはおかまいなしに話し続ける。初めのうちは「仕方ないなぁ」と観念して穏やかに相手をしているが、長引くと次第に攻撃的な気持ちが湧いてくる。

このような配慮に欠けた訪問を繰り返していると、知らないところで招かれざる客とのレッテルを貼られることになる。何らかの用件で時間を割いてもらいたい時は、事前に約束を取りつけるのがよいのはもちろんだが、突然訪ねなければならない時は、今ここで話し始めてよいか出直した方がよいかをまず打診し、相手が自分の都合を述べるきっかけを与えるべきである。また、話し始めてからも、相手の動作や表情に注意を払い、相手が急いでいるのに長居し過ぎたり、相手がうんざりしている話題を引きずったりしないよう配慮するのが礼儀である。

資料請求の手紙を受け取ることが多い場合、同じ資料を請求するにも、返信用切手を同封してくる人もいれば、依頼文の便箇しか送ってこない人もいる。大抵は返信用の切手に加えて返信用封筒を同封してくる。その封筒には本人の住所が書かれている。原則として受け取った順に返事を出すことにしていても、どうにも忙しくて仕方がないこともある。

極端な場合は今日出張から帰ってきて明日また出張に出るということもある。その合間に仕事を片づけながら、資料請求などに返事を出す。そのような状況の中、返事するために、わざわざ適当な封筒を探し、相手の住所を書き、郵便局に行って重さに応じた切手を貼ってもらうというのは、なんとも面倒なことである。

返信用封筒に住所も書いてあり、資料の分量を予測して多めの切手が貼ってあれば、こちらは適当な資料を封筒にすべり込ませて、翌日出かけるついでに投函すればよいので、どんなに時間のない時、気持ちにゆとりのない時でも、何とか対応しやすい。それに比べて、返信用の封筒や切手のないものは、どうしても後回しになりやすい。

人に相談する時など、自分の問題で頭が占領されているため、ともすると相手に対する心配りが疎かになりがちである。そもそも相手の置かれた状況などなかなか予測できるものではない。だが、どんな事情があるかわからないからこそ、相手にできるだけ負担をかけない気遣いは欠かせない。

返信用封筒を入れたり、電話や訪問の折に「今ちょっとよろしいですか?」と相手の都合を確認するなど、ほんのちょっとした心遣いだが、これがその後の関係の良否を決することになるのである。

— posted by 有働 at 11:59 pm  

 

人間の対人的な開放性は社交性と自己開示性

ひと目見た瞬間に、とっつきにくい人とかとっつきやすい人といった印象ができあがる。にこやかな表情で適度にしゃべってくれると非常に付き合いやすい感じがする。無表情な人や言葉数が極端に少ない人を前にすると、どう接したらよいかが上手く掴めず戸惑いが生じる。

向こうがにこやかに接してくれると、こちらも心を開きやすい。雑談の中にプライベートな感想や体験談を入れやすい。こちらがプライベートなことをもらせば、向こうも同じ程度にプライベートなことをしゃべりやすい、あるいはしゃべらねばとのプレッシャーが働く。こうしてお互いの心の開き合いが進行するのである。

ところが、どうしても心を開けない人というのがいる。相手がせっかく心を開いてプライベートなことまで話してくれているのに、自分のことはほとんどしゃべらない。これが無ロでいかにもとっつきにくい人であれば、初めから見当がつくので別に意外でもないし、こちらからあえて心を開く気にもならない。相手を戸惑わせるのは、饒舌なのに自らを語ることのない人物である。

人間の対人的な開放性にも二種類あることがわかるだろう。一つは初対面の瞬間の接しやすさを決するもので、いわゆる社交性である。雑談が上手で人の気をそらさない人は社交的な人といえる。もう一つは、自分の本音、内面を人にもらすかどうかを決するもので、自己開示性である。

この二つの開放性はお互いに独立した次元のものである。したがって、社交性が高く、時事的な話、スポーツの話、人のうわさ話、ちょっと変わった話などをおもしろおかしく表情豊かに聞かせ、人の気をそらさないといったタイプではあるが、その人の内面が全然見えてこないという場合がある。

ちょっとプライベートな領域、内面的な話に突っ込まれると、冗談交じりに軽くかわしてしまう。話題は豊かで話し方も上手なのだが、自分の内面をさらすことに対する抵抗が強いのである。反対に、口下手ゆえにいつも無口なのだが、常に本音が見えていて安心できるといったタイプもある。

人に対する心の開き方も人それぞれであり、付き合う際には相手の対人的開放性の特徴を踏まえる必要がある。特に自己開示は心理的距離のバロメーターといえる。仕事をうまく進めるには心理的距離を縮めることが大切である。

ただし、プライベートな領域に強引に踏み込まないように注意が必要である。社交話とこちらの自己開示により相手の心の鎧を少しずつ溶かしつつ、自己開示を引き出すことになる。心理的距離は徐々に縮めていくのがコツである。

— posted by 有働 at 11:48 pm