口下手でも聞き上手は相手の心を開かせる最大の武器になる

営業マンなど人と交渉することの多い職種の人は、何とか話上手になれないものかと雑談のネタを仕入れたり軽やかな話し方を意識したりと苦心しているものである。そうした努力も大事だが、人と交渉するのがやや苦手という人がまず身につけるべきは、相手を気持ちよくしゃべらせる技術ではないか。

話上手の人がさぞかし活躍しているだろうと一般に考えられているセールスでも、意外なことに成績のよい者には内向型が多いという。内向型の人間は、概して初対面を含めてよく知らない人としゃべるのが苦手である。よく知らない人を前にすると、何をしゃべったらよいのかわからない。「こんなことを言っては失礼になるのでは」「気を悪くしたのではないか」「もっと明るく楽しい話をしなければ」など、気を遣うばかりで会話が滞りがちになる。その不器用さが信頼に結びつくということであろうか。

明るい声であいさつをし、楽しい雑談を交えて流暢に説明する人に対すると、「やり手の人だな」との印象を受けるが、その分警戒するということがある。あまりに饒舌で調子のよい者より、口下手ながら一所懸命説明しようとする者の方が、相手としては安心である。

さて、ロ下手な者はもちろんのこと、話上手の者も身につけるべき聞き上手の秘訣とはどんなものだろうか。ポイントは、相手に気持ちよく話させることである。頻繁にうなずくことで、話し手は気分が乗り饒舌になっていく。そして、「なるほど」「そうですね」などと合いの手を入れる。これだけでも共感しながら耳を傾けているというこちらの姿勢は伝わり、相手は気分よく話すことができる。さらに、時々相手の語尾を繰り返すのも有効である。

「その時は本当に腹が立ちましたよ」に対して「それは腹が立ちますね」、「そんなわけで予想がはずれましてね」に対して「はずれましたか」といった具合に。相手の話す出来事・体験談などに類似した知識なり体験がこちらにある場合は、それを披露すればこちらの共感性はよりよく伝わるし、共通性が両者の壁を薄くする。

対話のやりとりのタイミングも大切である。向こうが話しているのに割り込むようなことはしない。言葉が途切れがちにしゃべる人、話し始める前にひと呼吸置く人、強引に会話に割り込むのが苦手な人などは、話す番をすぐ人に持っていかれがちである。そんなタイプの人には十分配慮し、相手の言葉が途切れたからといって急いで話し始めないようにする。

また、自分が話している時、あるいは話し始めた時に向こうが話し出そうとしたら即座に譲る。自分が話すことでアピールするよりも向こうに気持ちよく話してもらうことの方が大事なのであるから、言葉が重なったら必ず譲るのがよい。こうした配慮のもと気持ちよく話してもらうことで、相手の気持ちは和らぎ自分に対する印象は好意的なものとなる。相手の心を開かせるのは何といっても聞き上手である。

— posted by 有働 at 01:28 am