人間の対人的な開放性は社交性と自己開示性

ひと目見た瞬間に、とっつきにくい人とかとっつきやすい人といった印象ができあがる。にこやかな表情で適度にしゃべってくれると非常に付き合いやすい感じがする。無表情な人や言葉数が極端に少ない人を前にすると、どう接したらよいかが上手く掴めず戸惑いが生じる。

向こうがにこやかに接してくれると、こちらも心を開きやすい。雑談の中にプライベートな感想や体験談を入れやすい。こちらがプライベートなことをもらせば、向こうも同じ程度にプライベートなことをしゃべりやすい、あるいはしゃべらねばとのプレッシャーが働く。こうしてお互いの心の開き合いが進行するのである。

ところが、どうしても心を開けない人というのがいる。相手がせっかく心を開いてプライベートなことまで話してくれているのに、自分のことはほとんどしゃべらない。これが無ロでいかにもとっつきにくい人であれば、初めから見当がつくので別に意外でもないし、こちらからあえて心を開く気にもならない。相手を戸惑わせるのは、饒舌なのに自らを語ることのない人物である。

人間の対人的な開放性にも二種類あることがわかるだろう。一つは初対面の瞬間の接しやすさを決するもので、いわゆる社交性である。雑談が上手で人の気をそらさない人は社交的な人といえる。もう一つは、自分の本音、内面を人にもらすかどうかを決するもので、自己開示性である。

この二つの開放性はお互いに独立した次元のものである。したがって、社交性が高く、時事的な話、スポーツの話、人のうわさ話、ちょっと変わった話などをおもしろおかしく表情豊かに聞かせ、人の気をそらさないといったタイプではあるが、その人の内面が全然見えてこないという場合がある。

ちょっとプライベートな領域、内面的な話に突っ込まれると、冗談交じりに軽くかわしてしまう。話題は豊かで話し方も上手なのだが、自分の内面をさらすことに対する抵抗が強いのである。反対に、口下手ゆえにいつも無口なのだが、常に本音が見えていて安心できるといったタイプもある。

人に対する心の開き方も人それぞれであり、付き合う際には相手の対人的開放性の特徴を踏まえる必要がある。特に自己開示は心理的距離のバロメーターといえる。仕事をうまく進めるには心理的距離を縮めることが大切である。

ただし、プライベートな領域に強引に踏み込まないように注意が必要である。社交話とこちらの自己開示により相手の心の鎧を少しずつ溶かしつつ、自己開示を引き出すことになる。心理的距離は徐々に縮めていくのがコツである。

— posted by 有働 at 11:48 pm